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Graves



墓を見るとき、私たちはそこに自分の影を見る。そして、墓の中から見るとき、世界は裏返って見える。

私たちにとって墓とはどういう対象だろうか?墓を前にすると私たちは、かならずしも宗教を信じていなくとも、そこに物理を超えた何かを意識する。墓は、人間が作った最も古い文化的な制作物であり、そこには、時代や地域ごとにさまざまな世界観が形象化されている。魂とは、自己とは、他者とは何か。自分がいなくなった後の世界、あるいは自分にとっての死後の世界とは何か。墓は、そうした根源的な問いを投げかけてく る。そして、宗教的な権威が失われた時代に生きている私たちにとって、そうした問いは、それぞれが主体的に考えなくてはならないものとしてある。 

墓に入った自分を想像してみよう。地下に仰向けになって地表を見上げると、ちょうど世界地図を鏡に映した時のように地面は左右反転することになる。墓は、この世界に対して少し異なる視点を与えてくれる。自分はもうその世界の中に属しているわけではないが、全く別の世界にいるわけではない。そこには少しの距離があり、その距離が世界をより総合的に眺めるチャンスを与えてくれるだろう。 

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