WEEKEND|2020|core of bells|installation view
ジェネラル・ミュージアム コレクション展
コラージュ、カムフラージュ
ジェネラル・ミュージアム 企画展
dis/cover
2022.6.27 – 7.18
ジェネラル・ミュージアムは、建物も耐久素材もない野外環境で、あらたな公共圏 = ミュージアムを構想、実践するプロジェクトです。ホワイトキューブのように閉じた場ではなく、多層的な環境に開かれたジェネラル(総合的)な場としてのミュージアムを実践していきます。様々なリサーチやカンファレンスを経て、この度、東京での最初の展覧会を多摩地域の住宅街に面した森で開催します。
本展覧会は、コレクション展『コラージュ・カムフラージュ』と企画展『dis/cover』の二つの展覧会が、森のなかに重なるかたちで構成されます。また、周辺の団地や商店、古墳、地質、動植物の生態など、多層的な環境を展覧会の一部として捉え、郊外の森に総合的な観点から光をあてていきます。
出展アーティスト・事物
《コラージュ、カムフラージュ》:
アイビー Ivy
関東造盆地運動 Kanto basin-forming movement
シマウマ Zebra
ジョルジュ・ブラック Georges Braque
パブロ・ピカソ Pablo Picasso
葉潜り蝿 Agromyzidae
迷彩 Military camouflage
ほか etc.
《dis/cover》:
井出 賢嗣 Kenji Ide
荻野 僚介 Ryosuke Ogino
神谷 絢栄 Ayae Kamiya
阪口 智章 Tomoaki Sakaguchi
佐塚 真啓 Masahiro Satsuka
鈴木 あい Ai Suzuki
張 小船 Boat ZHANG
孫田 絵菜 Ena Magota
両展覧会の共通の開催概要
会期|2022.6.27(月)~7.18(月・祝)火・水曜休
開場時間|12:00~18:00 (7.17のみ13:00~)
会場|長房町の住宅街に面した森
193-0824 東京都八王子市長房町138
・西八王子駅から徒歩18分
・富士森高校(バス停)から徒歩3分
上記の住所の民有地から入場し、入口正面にある階段を登って森の会場へお進みください(入口には「General Museum」の看板)。住宅街ですので、ご来場時はお静かにお願いいたします。開場時間(12-18時)以外の立ち入りは固くお断りします。
関連イベント1
アーティスト・トーク&ディスカッション
《「dis/cover」を巡って》
日時|2022年7月10日(日)14:00-16:00
会場|展覧会会場
出演|井出賢嗣、神谷絢栄、阪口智章、アート・ユーザー・カンファレンス
関連イベント2
ジェネラル・ミュージアム ツアー&カンファレンス3
《ミュージアムの発見(コラージュ、カムフラージュ、dis/cover)》
日時|2022年7月17日(日)11:00-15:00
会場|長房町の住宅街に面した森、及び周辺の古墳や商店など
出演|佐塚真啓、冨樫達彦、中島水緒、張 小船
主催|ジェネラル・ミュージアム、アート・ユーザー・カンファレンス
協力|NPO法人AKITEN
助成|公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
ジェネラル・ミュージアム
例えばニューヨークのメトロポリタン・ミュージアムには、絵画や彫刻をはじめ、家具、衣服、武器、食器といったあらゆる物が収集されている。だがそこには、石を割っただけの石器はあるが、自然に割れた石は収集されていない。アートミュージアムの対象はあくまで人工物であり、自然物は自然史博物館の対象となる。つまり、近代のアートミュージアムは、人工物と自然物という二項対立を前提とした制度だと言える。
しかし現実には、自然物ではない人工物は存在しない。黒曜石の鋭い石器は人間の割る行為によってだけでなく、黒曜石のアモルファスな分子配列があってこそ生み出される。紙や布は植物の合成した丈夫な繊維が生み、コンクリートはサンゴや有孔虫の外骨格だった炭酸カルシウムを再利用している。すべての物は、人為的で一面的な作業から創造されるのではなく、自然の多層的な作用から出来ている。作者が自身の作品について関わっているのは局所的な表面のみなのだ。そういう意味で、人工物として作品を作るということは、多層的な自然を人工物という表面で覆い隠すことだと言える。絵画は絵の具で布や壁を覆い隠し、建築は木材やコンクリートで地面を覆い隠す。人工物という観念的なラベルは、物の複雑な形成過程を隠してしまう。
近代のミュージアムに対して、あたらしいジェネラル・ミュージアムは、人工物/自然物といった分割を廃し、総合的、多層的に世界を扱う。そこで展示されるものは、世界の多層性を覆い隠す不透明なものではなく、コラージュのように多層的な環境につながり、呼応し、それを顕在化させるようなものだ。
コラージュ、カムフラージュ
ブラックやピカソのコラージュに貼られた紙は、下層を覆い隠す表面ではない。反対に、貼られた紙は絵の下層にある支持体の紙と呼応し、意識化させる。また、木目の印刷は、紙を覆い隠すと同時に、木などの植物繊維からなる紙の物質的由来を明示する。支持体の紙、貼られた紙、描かれたテーブル、描かれた静物といった要素は、相互に貫入しながら多層的な空間を顕在化させる。そうしたキュビスムの方法は、カムフラージュへと応用されていった。人や船の表面を覆うパターンは、その輪郭像を解体し、背景環境へ連続させる。カムフラージュは、環境を塗りつぶす表面ではなく、自身のイメージを解体することで多層的な自然と共鳴する表面を持つ。そしてカムフラージュは見る者に、能動的に探索することを求める。
dis/cover
本展では、既存のミュージアムのように意味付けられ、管理された場ではなく、さまざまな作用が重なった多義的な場に作品が挿入される。観客は、壁や台の上に並べられた作品を受動的に眺めるのではなく、どかす、掘る、めくるといった積極的な行為を通じて対象を探索する。見るべきものをはっきり展示することは、それ以外のものを隠すことでもある。従来の展示は、作品の表面に注意を向けさせるために、それ以外の要素を隠蔽してしまっていた。本展では、制作や展示という行為が本来抱えている隠蔽(cover)と発見(discover)という両義性を隠さずに明示する。窓のような透明な展示ではなく、扉のように塞ぐことと通すことが重なる展示が目指される。
ツアー&カンファレンス『コラージュ、カムフラージュ、dis/cover』
国土地理院のサイトからコピーされた古い航空写真を見ると、長房町が広大な関東平野(盆地)と関東山地のちょうど境界に位置する舟田丘陵の上にあることがわかる。住宅地に残された小高い森は、都市化された地表の奥深くで働く岩盤の運動を顕在化させている。沈下し続ける関東平野と、隆起し続ける関東山地の高低差が地層に埋葬された連綿たる時間の比喩となって、街のいたるところに露出している。立ち並ぶ長房の団地群は、南の海からプレートに乗ってやってきたサンゴの残骸から生成されたコンクリートによって、サンゴ礁のように集合した住環境を実現する。それらの団地は太古のサンゴ礁の壮大なモニュメントとなっている。
地面の隆起と沈下は、多様なグラウンドレベルを生み出す。長房町では、ある人の住居にとっての天井の高さが、隣のある人にとっての床の高さとなる。基準となる地は存在せず、多層的な地が混在している。そこでは、墓地や遺跡や化石といった地面の下に隠されているはずの過去がいたるところに露出している。ある人にとっての現在が、隣のある人にとっての過去となる。
長房団地に隣接するショッピングセンター「コピオ」は、コピーについて考察させる施設だ。植物やチェーン店の自己複製とドミナント戦略、野菜や住居のバラツキのない品質。そこにはひとつしかないものはなく、コピアス(豊富な)ものだけがある。
長房団地の公園の地表は、地下に埋められた船田古墳の形を浮かび上がらせている。掘り出された古墳の姿が印刷された看板は、うっすらと黄砂とコケに覆われ、陸生巻貝の食痕が描かれている。黄土色の顔料でもある黄砂が巨大なインクジェットプリンターのように大地に何万年にもわたって降り注ぎ、フォッサマグナ(大きな溝)を覆い隠していく。古墳を覆い隠すと同時に明示するその地面は、堆積し続ける関東ロームのデモンストレーションとなっている。
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